【インタビュー】1年間の学びが未来につながる――大学生が語るアントレ教育の魅力

「アントレプレナーシップ教育って、起業を目指す人だけのもの?」――そう思っていた大学生が、運営側として1年半活動したことで得た気づきとは? 教育の現場で感じた学びや成長、そしてこれから挑戦する後輩たちへのメッセージをお届けします。
アントレプレナーシップ教育に携わった 千葉大生の感想
参加者から運営側へ。視点が変わった1年半
「高校生のときにアントレプレナーシップ教育を受けた経験があったので、今度は“作る側”に回ってみたいと思いました。」
そう語るのは、2023年7月から約1年半、小中高校生向けのアントレプレナーシップ教育に携わった千葉大学4年生の廣瀨桐子さん(23)です。もともと「アントレプレナーシップ教育」という言葉を意識していたわけではなかったそうですが、中学生のころから「市販のスケジュール帳が使いづらかったら自分なりにカスタマイズする」といった考え方が自然と身についていたそうです。「与えられたものをそのまま受け入れるのではなく、自分に合う形に変えていく」。そんな価値観を持っていたからこそ、高校生になって教育プログラムに参加し、さらに今回の活動につながっていったのかもしれません。
活動を通じて、最も印象に残ったのは「アントレプレナーシップは誰にでも関係するものなんだ」と気づいたことでした。
「最初は、起業とかビジネスに興味がある人向けの教育だと思っていました。でも、実際に高校生と関わるなかで、日常の中で感じる違和感に目を向けたり、それを解決するために周りを巻き込んで動いたりすることこそが、アントレプレナーシップなんだと気づきました。」
また、教育に関わる責任の重さも実感したそうです。
「自分が作った教育プログラムが、受講する生徒にとっての“正解”になっていく。つまり、自分の手の加わった教材が、誰かの学びや成長に影響を与えていく。その責任の重さを感じました。」
教材づくりのリアル―想定外が次につながる!
この活動のなかで特に面白かったことは、「こちらの意図通りに教材が使われないことを受けて、チームで改善に繋げていくことをものすごいスピードで繰り返していた」点だったそうです。 現場で試してみないと分からないことがたくさんあり、そのたびに「じゃあ次はこうしてみよう!」と改良を重ねていく。実践を通して学びながら、より良いプログラムにしていくことの面白さを感じたといいます。
さらに、教育現場の先生方の姿勢にも刺激を受けました。
「先生方は、トライアンドエラーを繰り返しながら、新しい教育の形を模索しているんですよね。普通なら難しいと思われることでも、意思を持って発信し続けることで、協力してくれる人が集まり、形になっていく。その過程を間近で見られたのは、すごく印象的でした。」
後輩たちへ―「これ気になる!」なら飛び込んでみよう
この1年半の活動を通じて、「アントレプレナーシップを発揮するには、信頼がすごく大切なんだ」と強く感じたそうです。
「アントレプレナーシップって、新しいことを始めることだと思われがちですけど、実はその前に“当たり前のこと”をちゃんとやるのがめちゃくちゃ大事なんですよね。たとえば、約束を守るとか、誠実に対応するとか。そういう基本がしっかりできているからこそ、周りの人が協力してくれて、新しいことが生まれていくんだと思います。」
この経験を今後どう活かしていくか尋ねると、こう答えてくれました。
「アントレプレナーシップはどこにいても発揮できると思っています。家庭でも、友達付き合いでも、社会の中でも。信頼と誠実さを大切にしながら、自分が本当に信念を持てること、社会の当たり前を疑いより良くしていく姿勢を持つことを貫き、発信し続ける。そして、地道に周りを巻き込んでいく。そうすれば、フィールドを問わず、新しい価値を生み出していけるんじゃないかと思います。」
最後に、これからこの活動に参加しようか迷っている後輩たちに向けて、こんなメッセージをくれました。
「日常の中で『これ、もっとこうしたら良くなるのに』って考えることがある人には、すごくおすすめの活動です。ここでは、そういう考えが肯定されて、それを形にするためのサポートもあります。しかも、同じようなマインドを持った仲間や先輩と出会えるので、自分の視野も広がると思います。『これ、気になるかも』って思った人は、ぜひ飛び込んでみてください!」
アントレプレナーシップは、特別なものではなく、どんな場面でも活かせる力。日常の小さな違和感に気づき、それを形にする力を育てたい人にとって、最高の経験ができる場なのかもしれません。
千葉大IMOスタートアップラボ関係者から
スタートアップ・ラボ責任者 片桐教授のコメント
廣瀨さんには、2023年7月から約1年半にわたり、小中高生向けアントレプレナーシップ教育に関わってもらいました。ご自身のアントレプレナーシップ教育を受けた経験から、様々な観点で教育プログラムがより良くなるよう意見を出してくれました。このような優秀な学生が千葉大学から社会へと羽ばたいていくことを、大変心強く思います。
アントレプレナーシップとは、様々な困難や変化に対し、自ら枠を超えて行動を起こし、新たな価値を生み出していく行動様式やマインドそのものです。その行動様式・マインドを醸成するための「アントレプレナーシップ教育」は、単に起業を目指すものではなく、どの分野に進んでも求められる「課題を発見し、解決に向けて自ら行動する力」を養うものです。廣瀨さんが経験を活かし、アントレプレナーとして、社会でさらなる挑戦を続けてくれることを期待しています。そして、これからも後輩たちがその背中を追い、挑戦を続けてくれることを願っています。